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店内が一瞬明るくなる。灰色の乗用車が横付けした。
三木元は振り返り、「お客さんだー」とご機嫌でカウンター奥の定位置についた。
「ナンバープレートになんか被せてあるっすね」
谷が呟く。
「え?」
三木元が彼を見つめ、確認しようと外を見ると、二人組の目出し帽の男たちが闇に紛れて店内に入ってきた。
陽気な音楽と共に自動扉が開き、同時に彼らは店員に刃物を向ける。
「手を上げろ」
低い声で脅され、シンクロナイズドスイミングよろしく、二人は完璧に同時のタイミングで両手を上げた。フライヤー室の方に追いやられ、後ろを向かされる。
一人の男に追い詰められている脇で、もう一人の強盗が手際よくレジを開けて売上金を袋に詰めた。彼らはレジの鍵を奪い、レジ底の一万円も抜かりなく手に入れる。
「すぐ通報できないように縛っとくか?」
「大丈夫だろ。ここから通報して、サツが急いで来たって十五分はかかるからな」
二人の相談内容からすると、地元の事情に明るいようだ。それでも用心深い彼らは、店員の二人をガムテープでぐるぐると巻いて店を出た。
「た、た、大変だ……」
二人が去ると、三木元は膝をガクガクさせながらカウンター奥のハサミに手を伸ばそうとする。まとめてガムテープ巻きにされた谷も一緒に動いた。
彼らがハサミに到達する前に、赤いランプとけたたましいサイレンが近づいて来た。それは先ほどの車と同じように店に横付けした。急いで降りてきたのはなんと体格の良いポリスマンたち。
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