18人が本棚に入れています
本棚に追加
そろそろ朝が近づいてきた
警察官たちはすぐに戻ってきた。二人は事情聴取に応じた後、全売上金も取り戻し、平和をも取り戻していた。
「谷くんの活躍について、梅ちゃんに話さなきゃだね」
ちらり。
上がったほおに押されて、目が半月型になる三木元。谷は敢えてオーナーを見なかった。「梅ちゃん」とは早朝五時からのバイトの子だ。谷と同じ大学に通っている。彼よりひとつ上の先輩。背が低く明るくて、小動物を思わせる女の子だった。
「シフトが重なるように組んでおくからね」
「あ、……ウス」
三木元はうんうん、と嬉しそうに頷く。谷は頭をかいた。どうやら彼の恋心は見透かされているらしい。
ちらほら客がやってくるようになる。トラックの運転手やサラリーマンがエナジードリンクを買っていく。いつもの土方の男たちもそれぞれのタバコを買っていく。工期が終わるまでしばらくの間、これからも毎日顔を合わせることになるだろう。
「おはよーございます! ニュース見ましたよ!」
まだ暗いうちだったが、店内に一足先に朝がやってきた。明るいソプラノが響く。
「おはよー梅ちゃん、今日も元気だね」
「っす」
今日もまた活動の朝がやってきた。
最初のコメントを投稿しよう!