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まずここで、僕は自己紹介をしようと思う。僕は名前をシュウといい、アメリカ製のいわゆるアンドロイドで、アメリカの会社が、買収したイギリスの子会社に開発させたプログラムを、モンゴルにある小さな工場で組み立てた本体に搭載した後、出荷先の香港で初めて起動と初期化されたものだ。
僕を購入したのは香港の一等地に家を持つ裕福な家族で、現地出身の母親が多国籍IT企業の重役、日本出身の父親は原子力発電の技術者、その間に生まれて間もない一人息子がソウタだった。
多忙を極める両親は自分たちの代わりに息子の世話を焼いてくれる人を必要としていたが、それが妻の年老いた祖父母だけであることを不安がって、最新型のハウスキーピング用アンドロイド、つまり僕を購入した。アンドロイドは金で雇った人間と違い、家の中に転がっているビジネス上の重要情報を盗み出したりしないし、彼女達の教育方針に口を挟まないだけでなく、監視カメラや防犯ベルとしても機能したし、何より妻は新しいものを試すのが好きな人だった。
夫妻の間では、ナニーロボットは女性型のほうがいいのではとかいうような議論があったそうだが、子供が男の子だからという理由で、彼らは二、三十代の男性の姿をしたアンドロイド型ロボットを購入した。
一九四〇年代生まれの祖父母は僕を見てしきりに不気味だと嫌がっていたが、そのロボットが孫のオムツ交換から換気扇の修理まで家の中にあることはほとんどできることがわかると、次第に文句を言わなくなった。
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