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「ガサッガサッ・・」
遠くのほうで木の枝の擦れる音が聞こえた。
アイマールはすぐに砦から身を乗り出し、音のした方を確認する。
「来たのかっ?」
アイマールは唾をのみ込んだ。
音がしたのはアイマールがまさに最初に仕掛けを張った所だった。
「ガサッガサッガサッ」
「キャッ!」
音に驚きローラが耳を塞ぐ。
さっきより明らかに近い距離で仕掛けの木の枝が戻り、葉が揺れている。
まだ姿は見えないが確実に何かが砦に近づいていた。
「ゴブリンが来た!!作戦開始だ!!」
アイマールは準備していたロウソクに火をつけ、ローラに手渡した。
「僕が合図したらロウソクで壺から垂らした布に火をつけて!」
「わかった!」 大事そうに受け取り布に近づけるローラ。
そしてアイマールは投石器の巻き上げ機を力一杯巻き上げ始めた。中のスプリングが伸びきってギリギリと音を立てる。錆びた本体は嫌な音をたて軋み今にも分解しそうだ。
「頼むもってくれよ・・・。」
アイマールは祈るように鉄製のレバーを握り、飛ばす瞬間を逃さないように耳を澄ました。
「ガサッ!ガサッガサッ!ヴォ~!!」」
更に近くで3回目の罠に引っかかる音を聞いたアイマールはローラに合図を送る。
「今だ!!ローラ火をつけて!」
「はいっ!!」 素早くロウソクで布に火をつけるローラ。
導火線となった布に火が付いた事を確認したアイマールは、投石器のレバーを思い切り引き下ろした。
「行け~!!」
「ギ~ガッシャ~ン!!」
錆びた音と共に火のついた壺は放物線を描き見事に飛ばされていく。が投石器はその衝撃に耐えられずその場でバラバラになった。
「ボンッ!!」
壺はほぼ計算通りの場所に飛んでいき、激しい破裂音と共にその一帯を火の海にした。
アイマールは炎の周りを確認する、ゴブリン達が炎に巻かれて半狂乱に陥っている。
「上手く行ったぞ!ローラ」
ローラは引きつった笑顔を見せた。
そしてアイマールは3つのクロスボウ総ての引き金に紐を結びローラに手渡した。
「今度は、僕が合図したらその紐を思い切り引いて!」
ローラは震える手で紐を握った。
「わっ分かりました。」
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