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森は一歩足を踏み出す度に闇の濃度を濃くしてゆき、聞こえるのは自分の息使いと地面の枯れ葉を踏み散らす音だけだった。
「そろそろ明かりが必要だな…。」
アイマールは近くに落ちている木の枝を拾い地面に突き刺した。
そして道具袋から特製の油が染み込ませてある布を取り出し、枝の先にグルグルと何重にも巻き付けた。最後に生木のツルできつく結ぶと松明の完成だ！
火打石で火花を当てると、すぐに火は付き周りがほのかな明かりに包まれる。
アイマールは松明を片手に再び歩き出す。老木がが炎に照らされ、目の錯覚で生き物のように蠢いて見える。
”こんな暗い森の中に女の子が何も持たず一人彷徨っているのだろうか？” アイマールの頭に様々な疑問が浮かんでは消える。
さらに森の奥を目指すアイマールはギルドから貰った地図を広げた。もう少し西に進めば盗賊団の砦跡があるはずだ。その砦跡を目標に進む事にした。
デル・ボスケ村長の話によれば盗賊達が消えて間もなく、アルビオンの兵士によって砦は調査されたそうだ。
その時に目ぼしい財宝は総てアルビオンの兵士が持ち去り、今では何もないただの廃墟になっているらしい。
アイマールは松明の明かりを頼りに西へ西へと森を進んだ。そして持っている松明の明かりが消えかけた頃、ついに木々の間に黒い塊を発見した。 ”盗賊の砦”だ！
松明の炎が弱まってきた為アイマールは新しい松明を作り火をつけた。さっきの明かりとは比べものにならない明るさで照らされた砦は全体をツタで覆われた不気味なその姿を現した。
漆黒の森に音もなく佇む廃墟の姿は、死霊の住み家のように見え背筋が寒くなる。
「ローラさん、聞こえますか～！」
再び四方に大声を上げるアイマール。しかし耳が痛くなりそうな静寂が返ってきた。アイマールは恐怖ですくむ足を無理やり動かして砦の中を調査する事にした。
砦に近付くと今は枯れ木や枯れ葉に埋もれているが周囲に堀がある事に気が付いた。
正門の前はつり橋になっており、今は下りているが、橋を上げれば思った以上に堅牢な砦だと分かった。
門を押すと閂（かんぬき）は外されており悲鳴のような錆びた音を立てながら門は開いた。
真っ暗な砦の中を松明で照らすと、朽ち果てた木のテーブルや使いかけのランプが転がっているだけのガランとした空間が広がっていた。
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