第3章 盗賊の砦

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アイマールは注意深くゆっくりと砦の中入っていった。 砦の中の壁は所々崩れ落ち穴があいていた。かつて大陸中を荒らしまわり金銀財宝をため込んだ盗賊達がいた頃の面影は無かった。 「ローラさ~ん!」 砦の中の部屋を歩き回りながらローラの名を呼び続けたが、砦の中はひっそりと静まりかえり人や動物の気配も皆無だった。 松明の明かりで出来たアイマールの影が別の生き物のようにユラユラと壁でうごめきアイマールを時折ギョッとさせる。  蜘蛛の巣をかき分けながらそのままアイマールは砦の中央にある螺旋階段を上がった。屋上に繋がる塔屋を出ると広いテラス状になっていて森が見渡せる。 塔屋を出てテラスを探索すると、森の道に向かって錆びた小型の投石器が1台置かれていた。今でも油を差せば十分動きそうだった。 かつては盗んだ財宝を守る為にこの投石器を使っていたのかもかもしれない。  アイマールは砦の上から周囲の森を見渡した。すでに闇に包まれた森だが注意深く周りを松明の明かりで照らす。すると近くの老木の根元に白いものが見えた気がした。 「ん?なんだろ。」 急いで下へ駆け降り、砦から出て木のほうを観察する。  目を凝らすと大きな老木の根本に白い布が落ちていた。近ずいて手に取ると白いハンカチだった。そのハンカチには赤い糸で名前が刺繍されており無意識にアイマールは声に出していた。 「ローラ…。」 古い物ではなく、あまり汚れていない。最近森に持ち込まれた物だ。 初めてローラが森に入った証拠を発見しアイマールの鼓動が速くなる。  ハンカチがあった老木の周辺の地面を良く見ると足跡がいくつか見つかった。この足跡の主がローラをさらったのか?アイマールは考えられる足跡の主を探ったがすぐには浮かばなかった。  足跡はさらに森の奥へ続いており、アイマールは恐怖心に負けないように白いハンカチを強く握りしめ漆黒の森の奥に足を踏み出していった。
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