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「材木を売りに町に行くと、嫌でも色々耳に入ってくるのよ。
王様は狂って、戦争になるってなあ。
でもな、それでも、木は育つし、雨も降るのよお。
王様が狂っても、戦争になってもよお。」
そういえば、ダンゴはたまに川上から兵士の死体が流れてくると言っていた。
人の世で何が起きているのか、わずかばかりに興味を持ちながら、ここで森を管理し、材木を作っているのだろう。
「この森も焼かれるかもしれんなあ。
ダンゴも焼け死ぬかもしれんなあ。
んが、人に自然を焼き尽くすことはできねえ。
どこかの森ではまた木は育つし、雨は降るのよお。」
しばらくダンゴは火を眺めた。
男の眼の中で炎が愉快そうに踊った。
「だから、おらはまた材木を作って売るのよお。」
ダンゴはニヤっと笑ってジンタを見た。
その目が、「お前は何をするんだ?」と言っている。
だが、ダンゴはそういったことを決して口に出さなかった。
おそらく彼は、そういう柄ではないと自らのことを定めているのだ。
ジンタは星空を見た。
確かに、星空はジンタの苦悩には無関係に瞬いているようだ。
ふとジンタはある輝きに目を取られた。
星団だろうか。
もやもやしていて良く見えない。
そうか、とジンタは思った。
自分もああいう星なのかもしれない。
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