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もともと修理やら風呂炊きなんかをしてたから、小屋も作れたし、木や火の扱いには慣れてたからよお。
そいでも、何年かしたら、人恋しくなって町に戻ったりしたんだけど、結局また騙されて、材木売って作った金を全部ふんだくられてよお。
しかも、昔と同じ女子によお。
そんで、泣きながら森に帰ってきたのよ。
俺なんか要らない人間なんだって叫びながらよお。」
最後のひとことでジンタはハッとなった。
ジンタはここまで一言も話していない。
男は自分のことを読んでいるんだろうか。
それとも、たまたまか。
「そしたら、見てみろよ。
この星空だよお。
次の日には、雨が降って、木も草は喜ぶし、鳥は踊るのよお。」
男が薪を焚火に足した。
パチパチと音を立てて火の粉が飛んだ。
「要するになあ、おらのこの悲しみも苦しみも、自然には関係ないっつうこんよ。
そんでも、葉っぱは夜露をはじくし、雲は空を泳ぐのよお。
だから、ダンゴは木を育て、材木にして売り続けることにしたのよお。
こうして火を熾して飯を食いながらなあ。
それが自然だってことよ。」
男の名前はダンゴというようだ。
まるで自分の事を他人事のように語っているようにジンタには聞こえた。
きっとそれが、ダンゴが辿り着いた心境なのだ。
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