SS②:ミエナイキモチ

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「それなら、そういえばよかったのに」 「い、言えるわけないだろ! それにおまえ草平たちと約束してたなら、その……知らなかったから」  どうやら、草平と約束していたことを言わなかったことも、あまり良く思っていなかったのだ。  ごにょごにょと言葉を濁してはいるが、桃色に染まった煌牙の頬がすべてを示している。 「ごめんな。じゃ、続き、しよう」 「は……うわっ!」  座ったままの煌牙をぎゅっと抱きしめる。鼻をくすぐる煌牙の匂いは、人間の自分でもちゃんと嗅ぎ分けられる。  ずっと嗅いでいたくなるような甘い匂いだ。 「やめろって! ほら、宿題! 俺、宿題してるんだってば」  そう言いながら抱きしめた腕を振り払おうとする力はとても弱い。全然嫌がっていないように見える。  首筋にキスをして、優しく甘噛みすれば、「んっ」と甘ったるい声が漏れる。  煌牙の仕草や行動は言葉とかなり矛盾している。ほとんどは正反対のように思えるが、むしろ行動には煌牙の本音が見えているのだ。   ――おまえ、わかりやすすぎるだろ。  昨日、さんざん抱いたのに、こんなにかわいい姿を見てしまったら、また今夜も抱きたくなってしまう。 「今夜も抱いていい?」 そう耳元で囁けば、愛しい人は返事をせずに顔を背ける。 「わかった。そうする」  その言葉に眼の前の恋人は顔を真っ赤にしながら、睨みつけてくる。どうやらわざわざ聞くな、さっさと抱け、の意味は正解だったらしい。  頭を撫でながら抱き締めると、見えないはずの煌牙の尻尾は、なぜかぶんぶんと大きく振っているような気がした。                                       Fin
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