第三章:屈服。

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 唯一気になったのは、隣の席の黒斗だ。  いつもは午後から来る黒斗が、その日に限って早く来て、購買から戻った鹿賀に「なんでおまえがパシリしてんの?」と自分に聞こえるように聞いてきたことがあった。鹿賀が慌てて黒斗を教室の外に連れていく後ろ姿を煌牙は見ていた。  どうやら鹿賀が黒斗に事情を説明したようだが、その後も、特に自分とクラスメイトの関係に変化はなかった。  黒斗から何か言われたわけでもないし、鹿賀も煌牙のパシリを続けている。  見た目だけでは、黒斗は獣人なのか人間なのかは判断つかない。どちらにしろ、煌牙の立場を脅かす存在には思えなかった。  いつも、午後から来て、授業も興味ないといった表情で机に伏して寝ているし、時々、鹿賀や茶谷と話している姿を見かけるが、積極的に会話をするわけではなく、必要以上に感情を表に出すこともない。  もしかすると、黒斗は他人に対して感心や興味がないだけなのかもしれないと思ったが、それも煌牙にはどうでもいいことだった。
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