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「すみません。ありがとうございます」
「何して遊んだら、あんなに豪快に破れるのかしらね」
あえて理由は聞かずに、ふふふ、と微笑むみどりに、隣で立っている男はしれ、っと澄ました顔で立っているのが腹立たしい。
そいつに破られたんです、と言ってやりたい。
「じゃあね、クロはどうするの? ここで寝るの?」
「こいつと一緒なんてごめんだ」
「お、俺だって迷惑です!」
「あら、二人ともいつの間に仲良くなったの?」
「なってねぇ」
「なってません」
ほぼ同時に抗議するが、その抗議も受け入れられず、みどりは笑いながら部屋を出ていってしまった。
「直してもらってよかったな。くだらないこと言ってると、また俺に破かれて交尾されるぞ」
「二度とさせるか!」
「とにかくおまえは、俺に逆らうな」
「おまえなんか……犬のくせに!」
圧倒的な力の差があるのは、わかったが、なんだか悔しくて、苦し紛れに吐き捨てた。
「その犬に突っ込まれた狼だろうが」
「うっ」
そう言われてしまうと何も返せない。
もう何を言っても、あの屈辱からは逃れられないのだと頭を抱える。
「まぁ、みどりには、内緒にしておいてやるよ」
「当たり前だ、バカ!」
絶対に言えないし、知られたくないが、これで弱みを握られてしまったことになる。
父や兄が知ったら『ニホンオオカミの恥さらし』とでも言われかねない。
煌牙は悔しさでぎりぎりと歯を鳴らしたが、男は笑いながら部屋を出て行ったので、閉じた扉を睨みつけるしかなかった。
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