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プロローグ~化け物と呼ばれた日~
それは変わらない日常で、授業後の教室の、いつもの光景のはずだった。
はっと気づけば、クラスメイトが血だらけの状態でうめき声をあげて、苦しんでいた。慌てて駆け寄ろうすると、体がすごくけだるく、足がもつれそうになる。
「ひっ……」
駆け寄る自分に、クラスメイトは拒絶の反応を示した。いつも、気さくに話しかけてくれる友人の、恐怖に支配されたような顔を見たのは、初めてのことだった。
驚いたのも束の間、自分の視界に入った朱色にごくりと唾を飲み込む。
「なんだ、これ」
自分の両手の指先は、まるで生身の何かを引っ掻いたように、血がべっとりとついていた。そして、その血が目の前のクラスメイトの顔や体から出ている血と同じ朱色だと気づき、背筋が凍った。
「俺、何した……?」
周囲を見渡せば、恐怖に震える表情で自分を遠巻きに見ているクラスメイトが数人いた。普段、自分とふざけあったり、たわいもない話をしていたクラスメイトが、自分をまるでおそろしいものでも見るような目つきをしている。
一体、何が――
「ば、化け物!」
誰かがそう叫んだのをきっかけに、クラスメイトたちは、逃げるように教室を出ていった。
「ちょっと待っ……」
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