第二章:新しい生活とスクールライフ

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第二章:新しい生活とスクールライフ

「ふー、やれやれ」  煌牙はパイプベッドで仰向けになり、天井を見上げた。第一印象であった古びた日本家屋の外見の期待を裏切らず、家の中も昭和の香りが漂うクラッシックな部屋の作りで、そんなこの家に煌牙はこれから暮らすことになった。  学校を下見したあと、クロと一緒に家に戻れば、ちょうど夕飯の時間らしく、東条みどりが母の分まで食事を用意してくれていた。  自分がいない間に、母とみどりは気が合ったのか、すっかり仲良くなっていた。夕飯の間中、母親が自分や兄の話をスマホの写真を見せながら家族の話をしていて、正直、その場にいるのは照れくさかった。唯一、味方になってくれそうだったクロも家に着いた時点で、すでに姿を消していて、一人恥ずかしい思いに耐えることになった。それでも、しばらくはこんな母の姿をもうしばらく見ることもないか、と思い直し、煌牙はおとなしく二人のやりとりを眺めていた。  母は、煌牙が使うことになる部屋を見てから、みどりの運転する車で駅まで送られていった。別れ際「いつでも帰ってきていいからね」と言って、優しく煌牙を抱きしめてくれたときの母の声は、心なしか涙声だった。  そして、みどりから浴室の説明も受け、ようやく煌牙は一人になれた。  世間話程度に聞いたことだが、みどりはこの広い一軒家に一人で住んでいる。この家は一人で住むには広いので、学校と提携して、下宿先として生徒の受け入れもやっているらしい。最近は、家族でこの街へ引っ越してくることが多いらしく、下宿の受け入れは久しぶりだと言っていた。  下宿の生徒が使う部屋はちょうど改修中とのことで、煌牙には、みどりの亡き夫が書斎として使っていた部屋をしばらく使ってほしいと言われ、一階の庭先に近い六畳程度の部屋に案内された。動物に関する難しそうな本の収まった本棚と、古びた学習机にパイプベッド、殺風景な部屋ではあったが、扉を閉めれば、しんと静まり返り、心が落ち着いた。  部屋の隅には、煌牙が送った衣服や本、自分の身の回りのものを詰め込んだ段ボールが二箱くらい部屋の隅に置いてあった。
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