第一章:獣人の里で暮らす

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第一章:獣人の里で暮らす

  いまどき、獣と人のハイブリッドである『獣人』はそれほど珍しい存在ではなくなった。  彼らは、普通の人間の外見のままで、純血の人間のように紛れ込んでいると聞く。  少子化の影響で、人間と動物の交配を可能にした技術が普及した近年、動物の優れた能力を持った人間、すなわち獣人を、純潔な人間よりも優秀な存在と扱うこともある。例えば、チーターの血を受け継ぎ、人間とは思えないほど足が速かったり、サバンナの草食動物であるガゼルやキリンなどの血を受け継ぎ、視力が並外れていたり、そうした人ならざる者たちは、組織の中でもその能力を買われ、重要なポストに位置づけられることも多くなった。  ただ、ごく稀に、人間の外見で出てくるべきところを遺伝子の突然変異で、動物の耳や尻尾だけ残したまま生まれてくる子供も多数見られた。そういった子供たちが、容姿に関しての迫害を受けないように、日本全国の何ヵ所に、獣人の招致を積極的に行っている集落が存在した。その地では、純血の人間と獣人が共存し、生活しているらしい。  水嶋煌牙(みずしまこうが)は母親と、市内から電車で三時間ほどかけて、郊外のとある場所へ向かっていた。  電車の窓から見える風景は田畑に囲まれた一面緑色で、煌牙が今まで家族と一緒に住んでいた家は、市内の一等地のマンションで、駅も近く、その周辺は、いわゆる都会と呼ばれる繁華街だったため、その格差に目を見張った。 image=511626303.jpg
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