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第四章:友愛の証!?
いまだに目の前の光景が信じられなかった。みどりが飼っている犬のクロが実は人間だったなんて、夢にも思わない。
それも、今、自分が最も会いたくない人間だなんて。
「つーか、おまえなんでここで寝てるんだ」
「え、なんか部屋を改装中だって聞いて、ここに」
「そういえば、みどりがそんなこと言ってたな」
はぁ、とめんどくさそうにため息をついて、全裸の男はそのまま部屋の外に出ようとする。
「お、おい!」
「なんだよ」
男が振り返ると、その顔は、暗がりでもわかるほど不機嫌そうな表情だ。
「きょ、今日のこと、俺は許さないからな!」
「俺にヤラれたことか?」
「ヤッ、ヤラれたとか言うな!」
男は、より一層めんどくさそうな顔でため息をついた。
「じゃあ、聞くが、おまえはあのクラスで一番強い狼様なんだろ? そのおまえが俺に屈服して交尾した。どっちが強いことになる?」
「屈服なんてしてない!」
「おまえのケツん中、孕ましてやったの、もう忘れたのか」
「あれは、ちょっと油断しただけだ!」
「泣くほどヨガってたじゃねぇかよ、スケベ狼」
「スケベ狼って言うな!」
不覚にも泣いてしまったけれど、ヨガってはいない。ちょっとだけ気持ちよかっただけだ。
「煌牙くん、起きてる?」
みどりの声がして、そのままドアが開いて、全裸のクロ、いや黒斗とみどりが鉢合わせした。
「ちょっと、クロ! 部屋を裸で歩かないでって言ってるでしょ」
「仕方ねえだろ、こいつが鍵開けてねぇから」
当然のように、みどりはこの目の前の男をクロと認識していた。
「すみません、俺が悪いんです。鍵開けるのを忘れて寝ていたので」
「ほらな」
「あら、じゃあそれでクロはびしょ濡れなの? それならさっさとお風呂入りなさい」
「うるせぇな。言われなくても入る」
二人は、まるで本当の親子のように仲が良く見えた。確かに以前、煌牙が見かけたクロに話しかけるみどりの様子と何も変わらない。
「煌牙くん、これ、お母様ほど上手ではないけど、直しておいたから」
みどりから手渡されたのは、破けたはずの制服だった。
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