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(これ以上は――立ち上がれない――)
真一は寝ている珠緒を見て、歯を食いしばった。
(出来る出来ないじゃないんだよ。やるんだ俺! こんな事終わらせてやるんだ!)
今度は足の指を曲げ伸ばしする。
万年床の上で足の指は滑り、真一は進んでいる気はしなかった。それでも真一は諦めなかった。
(どうした真一! こんな時の為にジムに通ってんだろ?)
全身に力を入れ、何とかお尻は持ち上げた。
だが真一の首に、体重が一段とかかる。
真一は歯を食いしばり、首が悲鳴を上げるのを無視する。
足の指を布団に突き刺し、体をひねりながら更に頭を壁に押し付ける。頭皮からジョリジョリと音が聞こえ、新しい痛みが走る。
抜け毛を気にする様になった普段の真一に考えられない事だが、そんな事を気にする余裕はなかった。
真一はバランスを取りながらゆっくり体を起こしていく。
壁に肩や背中が当たる様になれば、後は簡単。
真一は何とか立ち上がると、もう一度珠緒を観察する。
――別段、新しい動きはない。
真一は呼吸が乱れ、全身汗まみれ。
だがゆっくりはしてられない。いつ珠緒が起きるかなんて分からない。
既に夢の国からこちらの世界に向かっているかもしれない。
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