第四章 監禁

4/5
前へ
/69ページ
次へ
(これ以上は――立ち上がれない――)  真一は寝ている珠緒を見て、歯を食いしばった。 (出来る出来ないじゃないんだよ。やるんだ俺! こんな事終わらせてやるんだ!)  今度は足の指を曲げ伸ばしする。  万年床の上で足の指は滑り、真一は進んでいる気はしなかった。それでも真一は諦めなかった。 (どうした真一! こんな時の為にジムに通ってんだろ?)  全身に力を入れ、何とかお尻は持ち上げた。  だが真一の首に、体重が一段とかかる。  真一は歯を食いしばり、首が悲鳴を上げるのを無視する。  足の指を布団に突き刺し、体をひねりながら更に頭を壁に押し付ける。頭皮からジョリジョリと音が聞こえ、新しい痛みが走る。  抜け毛を気にする様になった普段の真一に考えられない事だが、そんな事を気にする余裕はなかった。  真一はバランスを取りながらゆっくり体を起こしていく。  壁に肩や背中が当たる様になれば、後は簡単。   真一は何とか立ち上がると、もう一度珠緒を観察する。 ――別段、新しい動きはない。  真一は呼吸が乱れ、全身汗まみれ。  だがゆっくりはしてられない。いつ珠緒が起きるかなんて分からない。  既に夢の国からこちらの世界に向かっているかもしれない。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加