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真一の食事が済むと、次に珠緒は哺乳瓶を持ってきて子供に飲ませ始めた。
だが哺乳瓶の中身は一向に減らない。
「初めてパパと会ったから、緊張してるのかな?」
そう言うと珠緒は子供を抱きながらキッチンの方へとまた姿を消した。
真一は腕が抜けないかもう一度試してみる。――だがやはりダメだった。
今度は爪でロープを引っ掻いてみる。――ロープは固く、全く切れる気配はない。
真一は絶望で気が遠くなりそうだった。
「はい――ミルクが終わったら、今度はお昼寝の時間ね」
珠緒は子供をリビングに寝かせると、珠緒も子供の隣で横になる。
――そして真一の耳に寝息が聞こえてきた。
真一は珠緒をジッと観察する。
動く気配がないと判断すると、真一は尺取り虫の様に膝を曲げ伸ばしして、壁際まで這って進んだ。
真一の頭が壁にぶつかる。
首を前に曲げ、真一はもう一歩壁に進む。
頭は持ち上がり、今度は肩が壁に当たる。
この調子で真一は立ち上がろうとする。
――だが、ここからが難しかった。
足よりも念入りに縛られている体は思うように曲がらない。
お尻が床にキスしたまま離れようとしないのだ。
膝が真一の体重を持ち上げられずにプルプルと震えだす。
真一の脳裏に『諦める』と言う言葉がよぎった。
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