第二章 違和感

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 真一は仕事から帰って来て、玄関の扉を開いた。  そして一歩家に入ると違和感を感じた。 (何か――違う)  キッチン、リビング、寝室。全てが出た時のままのように思えた。  だが真一の家は元々散らかっていたので断定は出来ない。  部屋着のジャージに着替え、いつもの場所に腰を下ろす。  TVのリモコンを手に取り電源を入れる。  やはり全て定位置。別段変わった所はない。 (気のせいか)  そう思い、真一は夕食のカップラーメンを作る。  待っている間もう一度部屋を見渡す。泥棒でも入ったか。  現金はおろか、金目の物は全く無いのでどうと言う事はない。  テレビと買い置きのカップラーメンと煙草。それだけあれば充分。そしてそれらは今真一の目の前にある。  念のためトイレと押入れを開けてみる。 ――やはり誰かが隠れているなんて事は無かった。  真一はまた座り直してカップラーメンを平らげると、冷蔵庫を開ける。 (そうそう。これも大事あって良かった)  真一はテーブルに戻るとビールを喉に流し込んだ。  そして、二本目のビールを取りに行く頃には感じた違和感の事など気にしていなかった。
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