第六章 二日目

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 真一は道行く人を掻き分けて走る。  真一が一度だけ振り向くと、驚いている人達の隙間から、珠緒が追い掛けて来ているのが見えた。  肺はあえぎ、脚は悲鳴を上げても真一は走り続けた。 ――もう少しで駅だと言う所で、警官が三人歩いているのを見付けた。 「助けてくれ!」  真一は叫んだ。警官は真一に気が付くと叫びかえした。 「止まれ! そこで止まるんだ!」  真一がもう一度振り返ると、まだ珠緒は追って来ていた。  真一はそのまま警官達の所へ走った。  警官達の所へ辿り着くと彼等は真一を取り押さえた。 「助けてくれ! 頼む!」 「良いから大人しくしろ!」 「あいつが追いかけてくるんだ! 捕まえて!」  真一は警官達に繰り返したのんだ。 「大人しくしろ! 暴れるな!」  警官たちはそう言って真一の話を聞こうとしなかった。  真一は必死に首を巡らせた。  真一の周りには人垣が出来ていたが、その中に珠緒の姿は無かった。  真一は警官達に近くの交番へ連れられる時に気がついた。  自分がずっと股間を丸出しにしていた事を。
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