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第1話:探偵とトレンチコートとあたし
第1話
【立花探偵事務所】
あたしは、そう書かれた看板の前に立っていた。
「やっと着いたよー。いくらなんでも遠すぎるって」
ここに辿り着くまでにどれくらい歩いたのか、わからない。
「少しは痩せたかなあ」
どうでもいい独り言を呟きながらドアの前に行く。
あたしは、勇気を振り絞ってドアをノックしてみた。
「コン、コン」
軽い音が響き渡る。
…20秒ほど待ってみても返事がない。
「あれ?嫌な予感がする‥」
ため息をついて、もう一度ノックしようとした時、ドアの向こうから声が返ってきた。
「どーも、申し訳ない…ははっ少し取り込んでてねぇ、鍵は開いているんで入ってきてもらえないかな」
少し迷ったが言われるがままにドアを開けて中に入る。
「突き当りの部屋にソファがあるから、そこで待ってて。すぐに行くからさ」
先程の、気さくそうな声がまた聞こえた。
ゴソゴソと何かをしている音も聞こえる。
部屋に入ると、西洋風なオシャレなソファとテーブル、奥にはデスクと椅子があった。
「ここに座って待てばいいのかなあ」
あたしは、恐る恐るソファに座ってみる。
妙に座り心地の良いソファだった。
10分程フカフカの座り心地を楽しんでいると、ドアが開いた。
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