第1話:探偵とトレンチコートとあたし

1/4
前へ
/278ページ
次へ

第1話:探偵とトレンチコートとあたし

第1話 【立花探偵事務所】 あたしは、そう書かれた看板の前に立っていた。 「やっと着いたよー。いくらなんでも遠すぎるって」 ここに辿り着くまでにどれくらい歩いたのか、わからない。 「少しは痩せたかなあ」 どうでもいい独り言を呟きながらドアの前に行く。 あたしは、勇気を振り絞ってドアをノックしてみた。 「コン、コン」 軽い音が響き渡る。 …20秒ほど待ってみても返事がない。 「あれ?嫌な予感がする‥」 ため息をついて、もう一度ノックしようとした時、ドアの向こうから声が返ってきた。 「どーも、申し訳ない…ははっ少し取り込んでてねぇ、鍵は開いているんで入ってきてもらえないかな」 少し迷ったが言われるがままにドアを開けて中に入る。 「突き当りの部屋にソファがあるから、そこで待ってて。すぐに行くからさ」 先程の、気さくそうな声がまた聞こえた。 ゴソゴソと何かをしている音も聞こえる。 部屋に入ると、西洋風なオシャレなソファとテーブル、奥にはデスクと椅子があった。 「ここに座って待てばいいのかなあ」 あたしは、恐る恐るソファに座ってみる。 妙に座り心地の良いソファだった。 10分程フカフカの座り心地を楽しんでいると、ドアが開いた。     
/278ページ

最初のコメントを投稿しよう!

340人が本棚に入れています
本棚に追加