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「おおっ、思い出した!」
5分くらい経った後、村長は大声を上げた。
「ニホンという言葉はいつか聞いた事があったと思っとったんじゃが、タチバナ先生の生まれ育った国の名前がそんな感じじゃった。娘さん、あんたの見た目も先生によく似とる」
村長は手をポンと叩いて説明をしてくれた。
(タチバナ‥日本人の名前だ)
あたしの胸は少しだけ高鳴った。
「タチバナ先生というと、確か有名な探偵だったな」
ウィルスが口を開いた。
「確かにあの探偵さんなら、色んな事は知ってそうですね」
ポールも相づちを打つ。
「その、タチバナさんという人に会ってみたいです。どこにいらっしゃるのですか?」
あたしは、居ても立ってもいられなくなってきた。
「うーん、歩いて行くのはお前さんじゃ無理じゃのう。先生の居るハランの町に行くには、山を2つを越えなくてはならないからの」
村長は首を振りながら教えてくれた。
「それでは、何か交通機関はあるのですか?」
すかさず、あたしは質問をした。
「馬車が出とる。ここは田舎じゃで1番早いので今から3日後にな。しかし、金がかかるぞ。お主今の話じゃと文無しじゃろ?」
村長から辛辣な言葉が出る。
「そっそれは‥」
言葉が詰まってしまった。
「そこでじゃ、先生にはわしから先に紹介状を送っておくから、3日間ここでわしの手伝いをせぬか?そうしたら馬車のお金は建て替えてやるぞ」
(本当は3日も待ってられないけど‥)
選択の余地は無かった。
「お願いします」
あたしは、頭を下げながら腹を括った。
そして、このとき初めて、行方不明の父もこの奇妙な世界のドコかにいるかもしれないという予感が頭に過ぎった。
第6話へ続く
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