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「砂糖とミルクは幾つ?」
立花は、挽きたてのコーヒーをカップに注ぐ。
「ええと‥1つずつで‥」
あたしは反射的に応えてしまった。
「いやあ、運が良いよ、こっちの世界じゃあ中々美味しい豆が手に入らなくてねぇ。ちょうど、先週に元依頼主の伯爵殿からお土産で貰ってさ。少し酸味があるんだけど、良い味なんだよ」
香ばしい匂いと共に、カップが目の前に置かれた。
あたしは、ひと口飲んでみる
「美味しい!!あっ‥」
あたしは、大きな声が出て自分で少し驚いてしまった。
「はっはっは、お気に召してくれましたかな?」
立花は嬉しそうな顔をして、問いかける。
「ごちそうさま」
喉が渇いていたせいか、すぐに飲み終えてしまった。
「良い飲みっぷりだったね。とっておきを出した甲斐があったよ」
立花は満足気に笑っていた。
「お代わり淹れようか?」
つい頷きそうになったが、慌てて首を横に振る。
「あの‥実は‥」
あたしは口ごもってしまった。
(何を話せば良いのだろう?)
そんな心のうちを見透かしたかのように立花は髭を触りながら語りかけた。
「混乱するのも無理もないことだよ、お嬢さん。ココは君の居た場所の常識の外だからねぇ。何を話せば良いのだろうか分からないのは、至極自然なことさ」
ゆっくりとした口調で彼は続ける。
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