第9話:痣と転移魔法と鼻歌

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「ただ、1つだけはっきりとしているのは、少なくとも涼子くんがこちらの世界に転移した時点では、お父さんもこちらの世界のどこかに居たと言うこと。これは転移魔法の大前提だからねぇ」 「それじゃあ、やっぱり父は、今もこの世界に‥」 予想していたことだったが、あたしは少し嬉しかった。 「可能性は高いだろうねぇ。ただ写真に魔法を封じたのは、恐らく君のお父さんが出かける前だったと思うから‥君がこちらに来ていることには気づいているかどうか分からない。しかし‥」 立花が急に黙ったので、あたしは不安になる。 「うーん。止めとこうかねぇ。今考えても仕方がないことだし‥とりあえず君のお父さんを探そう」 立花は急に話を中断した。 (凄く気になる) 「立花さん、その前に言いかけたことを教えて下さい。気になるじゃないですか」 あたしは我慢できなくて質問した。 「そうですわ。先生はいつも余計なことはおっしゃるのに。教えて差し上げてくださいまし」 ニーナも援護射撃してくれた。 「だーめ」 立花は指を交差させて罰点の形を作ると、席を立った。 「私はこれから調べなくてはならないことがあるから、少し外出する。涼子くんは事務所の客室に泊まりたまえ。ニーナくん、案内を頼むよ」 立花はそう言って歩き出した。 「立花さん?」 あたしは間の抜けた声を出した。 「はぁ…承知いたしましたわ。先生」 ニーナは追求を諦めた様子だった。 立花は鼻歌を歌いながら部屋を出ていってしまった。 こうして、あたしの探偵事務所での1日は幕を閉じたのだった。 第10話へ続く
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