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「ただ、1つだけはっきりとしているのは、少なくとも涼子くんがこちらの世界に転移した時点では、お父さんもこちらの世界のどこかに居たと言うこと。これは転移魔法の大前提だからねぇ」
「それじゃあ、やっぱり父は、今もこの世界に‥」
予想していたことだったが、あたしは少し嬉しかった。
「可能性は高いだろうねぇ。ただ写真に魔法を封じたのは、恐らく君のお父さんが出かける前だったと思うから‥君がこちらに来ていることには気づいているかどうか分からない。しかし‥」
立花が急に黙ったので、あたしは不安になる。
「うーん。止めとこうかねぇ。今考えても仕方がないことだし‥とりあえず君のお父さんを探そう」
立花は急に話を中断した。
(凄く気になる)
「立花さん、その前に言いかけたことを教えて下さい。気になるじゃないですか」
あたしは我慢できなくて質問した。
「そうですわ。先生はいつも余計なことはおっしゃるのに。教えて差し上げてくださいまし」
ニーナも援護射撃してくれた。
「だーめ」
立花は指を交差させて罰点の形を作ると、席を立った。
「私はこれから調べなくてはならないことがあるから、少し外出する。涼子くんは事務所の客室に泊まりたまえ。ニーナくん、案内を頼むよ」
立花はそう言って歩き出した。
「立花さん?」
あたしは間の抜けた声を出した。
「はぁ…承知いたしましたわ。先生」
ニーナは追求を諦めた様子だった。
立花は鼻歌を歌いながら部屋を出ていってしまった。
こうして、あたしの探偵事務所での1日は幕を閉じたのだった。
第10話へ続く
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