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1階に行くと意外な光景が目に飛び込んできた。
エプロン姿の立花さんがフライパンを握っていたのだった。
「涼子くん。おはよう」
立花は、フレンチトーストを作りながら挨拶した。
「おっおはようございます」
あたしも少し驚いた表情で返事をした。
「もうすぐ、ゆで卵出来るよ。固ゆでだけど、構わないだろ。ウチはゆで卵はハードボイルドで決まっているんだ」
そう言いながら、あっという間に朝食の準備が終わってしまった。
「簡単なもので、すまないねぇ。お口に合えば良いのだが」
立花は手を合わせるのと同時にあたしとニーナも手を合わせる。
「いただきます」
あたしたちは、食事を始めた。
「あっ美味しい」
フワフワのフレンチトーストを食べて、あたしは、感想をもらした。
「それは良かった」
立花はニヤリと笑う。
「でも、意外でした。立花さんみたいなタイプは料理なんてしないと思ってましたから。全部ニーナさんに任せてるのかと」
あたしはつい思ったことを言ってしまった。
「いやぁ。それはだねぇ」
立花はチラッとニーナを見た。ニーナはバツの悪そうな顔をしている。
「彼女は下手なんだ‥そのぉ料理が壊滅的に。私も餓死するわけにはいかないからねぇ。自衛くらいするさ」
立花はそう言って、コーヒーを一口飲んだ。
「先生、酷いですわ。いくら事実でも、あんまりです」
ニーナは頬を赤らめて、抗議する。
(事実なんだ‥)
あたしは心の中でツッコんだ。
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