第10話:フレンチトーストと国境と紫鬼

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1階に行くと意外な光景が目に飛び込んできた。 エプロン姿の立花さんがフライパンを握っていたのだった。 「涼子くん。おはよう」 立花は、フレンチトーストを作りながら挨拶した。 「おっおはようございます」 あたしも少し驚いた表情で返事をした。 「もうすぐ、ゆで卵出来るよ。固ゆでだけど、構わないだろ。ウチはゆで卵はハードボイルドで決まっているんだ」 そう言いながら、あっという間に朝食の準備が終わってしまった。 「簡単なもので、すまないねぇ。お口に合えば良いのだが」 立花は手を合わせるのと同時にあたしとニーナも手を合わせる。 「いただきます」 あたしたちは、食事を始めた。 「あっ美味しい」 フワフワのフレンチトーストを食べて、あたしは、感想をもらした。 「それは良かった」 立花はニヤリと笑う。 「でも、意外でした。立花さんみたいなタイプは料理なんてしないと思ってましたから。全部ニーナさんに任せてるのかと」 あたしはつい思ったことを言ってしまった。 「いやぁ。それはだねぇ」 立花はチラッとニーナを見た。ニーナはバツの悪そうな顔をしている。 「彼女は下手なんだ‥そのぉ料理が壊滅的に。私も餓死するわけにはいかないからねぇ。自衛くらいするさ」 立花はそう言って、コーヒーを一口飲んだ。 「先生、酷いですわ。いくら事実でも、あんまりです」 ニーナは頬を赤らめて、抗議する。 (事実なんだ‥) あたしは心の中でツッコんだ。
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