第2話:出張と失踪と思考

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しかし、次の日になっても父の音信不通のままだった。 今日は土曜日、学校は休み。 心配でほとんど眠れなかったあたしは、父との会話を思い出していた。 「あの時、お母さんのことを何か喋ろうとしていた。あたしにはわざわざ出張と嘘までついて出掛けて行った」 どうして、そんな嘘をついたのだろうか? 母のことって、なんだろうか? 手がかりが少な過ぎて全然分からない。 ふと父の小言が頭の中でささやいた。 『思考力を養うって言うのはだな、単純に知識を溜め込むって事じゃないんだ。自分の頭で考えて、考えて、考え抜くんだ。その結果が正解か不正解かって言うのは大して重要じゃない。考えて答えを出すって言うプロセスが大事なんだ。これが出来る人間っていうのは凄く幸せなんだよ。今は直ぐに正解を与えられるけど、本当に正解なのかどうか疑うことを忘れがちだ。だから、若い内は特に常識に捕らわれないで物事を考えて欲しいな』 長過ぎる父の口癖だった。 今は特に関係ないのに、何故かあたしはこの言葉が凄く大事なことに思えた。 「またアルバムでも見ながら話そう」 父の最後の言葉。 そんなものを見ても何も分かるはずが無いのに、自然とアルバムを探しに父の書斎に足が向かった。 『常識に捕らわれるな』 何度も父の声が頭の中でこだましていた。 第3話に続く
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