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ある兄弟の話。
中学三年になった兄のAくんと二つ年下のBくんは、初夏にお父さんの仕事の都合で山に囲まれた田舎へと引っ越した。
これまで住んでいた場所とは違い家の近くに店はなく、車で数十分走らなくては買い物もできないという環境に、最初のうちはAくんたち兄弟はもちろんお母さんもうんざりとした気持ちになったという。
しかし、一ヵ月も過ぎると生活も少しは慣れ始め、ようやく新しい生活が軌道に乗り始めた。
そうして、梅雨が明け夏休みを迎えたある日の昼前。
「あれ? 兄ちゃん、あの木何かなってるよ」
外は快晴で、無駄に広い庭へ出て兄弟二人で遊んでいた最中、弟のBくんが山を指差して突然そんなことを言った。
「木? ……ああ、ほんとだな。あんなの昨日まであったっけ?」
弟が指し示す先を見たAくんも、山の中に一本だけ真っ白くて丸い大きな実をたくさんつけた木があることに気がついた。
他に遊べるような場所もないため、毎日のように庭でキャッチボールなどをしていた二人だが、今日まであんな実をつけた木など見た覚えがない。
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