第三章 『瞳に映るもの』

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「なんでしょうか?」 「以前、ホームズさんが『松花堂庭園・美術館』の副館長にしていた相談ってなんだったのでしょうか?」  ホームズさんは、ああ、と苦笑する。 「すみません。米山さんの事件やこの旅行のことで、頭がいっぱいでお伝え忘れていましたね。 実は、家頭邸を美術館にしたいと思っているんですよ」 「えっ、家頭邸を美術館にですか?」 私は驚いて、目を瞬かせる。 「はい。近々の話ではないのですが、そういう計画を立てているんです。 一階をカフェ併設の美術館にしたいと思っているんです。家頭家には受け継いできた美術品がありますし、それらを展示して、カフェコーナーがあればと」 家頭家の展示室は、今の段階でも小さな美術館といえるほどだ。 哲学の道を散歩して美術品を観たあとに、カフェで一息つけるなんて、素敵だろう。 「素敵ですね」 「ありがとうございます。そうしたわけで井川副館長を始め、さまざまな方にいろいろなことを教えていただいているところだったんです」 私は、そうでしたか、と熱い息をついた。
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