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親友の葵とホームズさんが、『京の三弘法詣り』に行く四月二十一日。
その日は、私――宮下香織の誕生日だ。
葵は前日の二十日、私を『北山紅茶館』に誘ってくれた。
美味しいスコーンと紅茶で誕生日を祝ってくれながら、
「一日早くて、ごめんね」
申し訳なさそうに言う葵に、ううん、と私は首を横に振る。
誕生日を友達に祝ってもらいたい、と思ったことがあまりない。
なので、誕生日をあえて伝えたことがなかった。
お返しも面倒に感じていたからだ。
上っ面のお祝いなんてごめんだと思っていたのかもしれない。
だけど、葵はそうじゃない。
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