掌編 『宮下香織の決意』

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私の誕生日を心から祝ってくれているのが伝わってくる。 前日だろうと当日だろうと関係なく、その気持ちが嬉しかった。 「そして、下手くそで申し訳ないんだけど、誕生日プレゼント」 おずおずと差し出してくれたのは、レースで編んだコースターと、綺麗な刺繍の入ったハンカチに、手作りのクッキーのセットだった。 コースターは、ポットの形をしていてとても可愛らしい。 ハンカチには、私のイニシャルとともに花が施されている。 「わあ、おおきに。綺麗やし、可愛い。ほんで、葵の作るクッキーが大好きやし、嬉しい」 葵の作るクッキーは、もちろんプロ並みというわけではないけれど、素朴で癖になる味わいで、本当に美味しい。 以前、一度もらったことがあり、また食べたいと思っていたから、これもまた嬉しい。 何より、私を想って、心を込めて作ってくれたことに感激だった。
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