第一章 『京の三弘法と蓮月の想い』

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――― ――――― ――――――― 「――葵とホームズさん、来月ほんまに旅行に行くの?」 京都府立大学内にある『稲盛記念館』一階に『delicafeたまご京都北山』という学食がある。 学食とは思えないお洒落な店だけれど、ありがたいことにとてもリーズナブルだ。 私と香織は時折、そこでランチを食べる。 丹波黒豆たまごのオムレツを食べながら、突然そんなことを聞いて来た香織に、私はごほっとむせて、口に手を当てた。 「……い、行くよ?」 語尾がなぜか疑問形になってしまいながら、私はそう答える。 頬が熱くなって仕方がない。 「結局、どこに行くことになったん?」 「それは、その日までのお楽しみということになって……」 私が頼んだメニューは、日替わりパスタだ。 賀茂茄子が入ったトマトソースが、とても美味しい。 気恥ずかしさに顔を上げられないまま、私はスプーンの上でフォークをくるくると回し、パスタがどんどん肥大化されていく。
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