第一章 『京の三弘法と蓮月の想い』

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「やっぱ、親には内緒なん?」 香織は、興味深そうに小声で尋ねる。 「ううん」 「えっ、言ったの?」 信じられない、と香織が前のめりになった。 「ホームズさんが、『葵さんのご両親に嘘をつく付き合いはしたくないんです』って。『それで旅行を反対されたら、その時は諦めましょう』って言ってて……」 「え、なにそれ、ホームズさん、めっちゃええ人みたいやん」 露骨に顔をしかめる香織に、私は肩をすくめた。 「……みたいじゃなくて、ちゃんと良い人だよ」 「ほんで、親は?」 「『もう大人なんだし、勝手に行ってらっしゃい』って。『でも、挨拶とかには絶対来ないでほしい』って、困ったように言ってた」 「そらそやろうなぁ。お父さんにも言うたの?」 「直接は言ってない。お母さんづてに。お父さんは気持ちは複雑だけど、ホームズさんとの交際は認めてくれてるし、お母さんは大賛成だしね」 「なるほど。ホームズさんは長い時間をかけて、外堀を埋めたんやな」 「外堀って」 「そやけど、それだけ葵のことが好きってことなんやな。その点は私もホームズさんのことを買ってるんやで。あのカッコよさが崩れるくらい、葵にまっしぐらやし」 うんうん、と頷く香織に、私は頬が熱くなるのを感じて、目を伏せた。
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