第一章 『京の三弘法と蓮月の想い』

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「そうそう、ホームズさん、今はどこに修業に?」 「あれ、言ってなかった? 『大丸』だよ」 私が答えると、香織はごほっとむせた。 「ホームズさんが大丸さんに? あんな人がデパ地下のスイーツコーナーとかいたら長蛇の列になるんちゃう?」 京都の人は、『大丸京都店』を『大丸さん』と呼ぶ人が多いそうだ。 それだけ、身近で地域に密着しているのだろう。 香織の言葉に、私も思わず、白シャツにエプロンをつけてスイーツを提供するホームズさんの姿を思い浮かべてしまった。 たしかに、思わず並んでしまう人が続出しそうだ。 「ううん、店頭に立ったりはしてなくて、営業推進部って部署にいるみたい」 「そうか、当たり前やけど、デパートって店頭販売だけやないし」 「販売のイメージは強いよね。大学生になったし、化粧品を買いたいなと思うんだけど、デパートの化粧品コーナーとか、眩しくて気後れしちゃう」 「うんうん、分かる。そやけど、うちはお母ちゃんのお供でよく行くけど、行き届いてて、さすがやなぁ、って思うし、自分も化粧品買うならちゃんとしたコーナーで相談に乗ってもらいたいて思うわ」 「そうなんだ。ちょっとがんばってみようかな」 「そやで。旅行前に、メイクの仕方とか教えてもらったり」 「……うん」
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