プロローグ

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ホームズさんが小走りでこちらに向かって駆けてきている。 その後ろには、井川副館長の姿もあり、私は彼に向かって一礼をした。 「お待たせしてしまって、すみません。葵さんも同席してくださって良かったのに……」 「いえ、庭を愛でて楽しんでいました」 せっかく来たのだから、松花堂庭園をゆっくり見て回りたい。 ホームズさんも、そんな私の気持ちを理解できるのだろう。 「春の庭園は良いものですよね」と、弓なりに目を細めた。 ゆっくりと歩いてきた井川副館長が、「やあ」と片手を上げた。 「葵さん、お久しぶりです」 「お久しぶりです」と、私は会釈を返す。 「葵さんに会うのは、清貴くんがうちに修業に来てくれていた時以来だから、約一年ぶりになるかな」 「はい。ですが、実は、秋にもこっそり来ていたんですよ」 「そうだったんだ、ありがとう。声かけてくれたらよかったのに」 井川副館長は嬉しそうに言った後、そういえば、とホームズさんの方を向く。 「清貴くんの修業は、どのくらい進んでいるんだい?」 「もう終盤ですよ」 「もう、終盤なんだ! 二年くらいかかりそうだって言ってなかった?」
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