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――四月二十一日。
『カラン』とドアベルが鳴るのを背中に聞きながら、私――宮下香織は、骨董品店『蔵』を出た。
この店から一歩外に出ると、アーケードの賑やかさが一気に押し寄せる。
一枚の扉を挟んで、まるで別世界にいるようだ。
「さて、映画に行こうかな」
私はバッグからスマホを出して、時間を確かめる。
マナーモードにしていたので気付かなかったが、着信があったようだ。
『小日向圭吾』
その名前に、私はそっと目を細めた。
彼からメッセージが来ることはあっても、こうして電話が掛かってくるのは初めだ。
何かあったのだろうか?
妙に心配になって、電話を掛け直す。
数度の呼び出し音の後、『香織さん?』と、小日向さんの驚いたような声が耳に届いた。
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