掌編 『宮下香織の結論』

2/19
9305人が本棚に入れています
本棚に追加
/261ページ
――四月二十一日。 『カラン』とドアベルが鳴るのを背中に聞きながら、私――宮下香織は、骨董品店『蔵』を出た。 この店から一歩外に出ると、アーケードの賑やかさが一気に押し寄せる。 一枚の扉を挟んで、まるで別世界にいるようだ。 「さて、映画に行こうかな」 私はバッグからスマホを出して、時間を確かめる。 マナーモードにしていたので気付かなかったが、着信があったようだ。 『小日向圭吾』 その名前に、私はそっと目を細めた。 彼からメッセージが来ることはあっても、こうして電話が掛かってくるのは初めだ。 何かあったのだろうか? 妙に心配になって、電話を掛け直す。 数度の呼び出し音の後、『香織さん?』と、小日向さんの驚いたような声が耳に届いた。
/261ページ

最初のコメントを投稿しよう!