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「過去で少しでも人間の多い環境で快適に一生を過ごしてほしい。少しでも少子高齢化を食い止める役に立ってほしい。そんな願いを託して親は子供を送り出しています」
ありえない話と言い切るには、リアルすぎる話だった。
「まさか、私たちに頼みたいことって……」
「はい。戸籍のない赤ちゃんを、病院に届けてほしいのです」
「それは……」
「もし、君が華子でなく、私たちを騙そうとしているとしたら、私たちは犯罪者だぞ?」
私が即答できないでいると、彼方が厳しい意見を言った。
彼女は途端に悲しそうな顔をした。
「お父さん、お母さん、私は使命を達成するため、感情をぎりぎりまで、セーブした状態で送られています。でもこんなことなら、抑えてくるんじゃなかった」
「信じてくださいとしか、私には言えません。ですが、私が大人のような判断ができるようになっても、この姿でいるのはお二人と過ごした記憶を過去にしたくなかったからです」
「私には絶対的な記憶があります。ですが、過去は過去です。新しい記憶に押し流されていきます。そんなことないとわかっていても、色褪せるのです。それが私は悲しい。あなたたちは、確かに存在するのにっ」
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