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彼女は涙こそ出ていなかったが、泣いていた。 「信じるわ……」 「美咲……」 私は彼女を抱きしめた。こんな姿を見せられて、これが嘘だって、私にはもう言えなかった。抱きしめて気づいたが、彼女は背中に赤ちゃんを背負っている。 「その子を病院に届ければいいのね?」 「はい。申し訳ありません。私はタイムマシンの指定座標から動けないのです」 「ごめなさいじゃないわ」 「ありがとう?」 「はいよく出来ました」 頭を撫でてやる。彼女はまたしても泣きそうになっている。ここまで来て、ようやく彼方も信じ始めたようだ。手を差し出して華子の頭を撫でた。 「よく生きててくれたな。私たちがいなくなった後も、君は動きを止めることなく生き、そして人間とアンドロイドの未来を考えている」 彼方が感慨深そうに呟いた。 「よし、華子、私も君を信じる」 「お父さん……」 「ありがとうございます。私は、未来に戻って報告をしなければなりません」 「次があるかどうかわかりませんが、おそらく希望者が出ればふたたびここに来ることになるでしょう」
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