いつか、王子様が

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「それの見極めは難しい気がします。けっこうみんなべたべたしていたし。ただ、あれはなんだかプレ恋愛って感じだったから・・・」 「ああ、疑似恋愛っていうか、予行練習?」 「ええ。キスってどんな感じかな?って好奇心で、ちゅってしたり、他の人の身体ってどうだろうってふざけて触りっこしたり・・・。女の子もお年頃ですから、それなりに」 「それなりに・・・」  今日は何度目のカルチャーショックだろう。  柚木は軽い頭痛を覚えた。  自分は、女性に何か夢を見ていたのかもしれない。  いや、肉食獣の実姉だけがイレギュラーだと信じたかったのだ。  柚木の苦悩もつゆ知らず、次に答えたのは名門女子大出身の橋口。 「私の大学はまったく見かけませんでしたね。生徒数が多すぎたせいもありますが、他の四年大とも交流があるから疑似の必要ないし、むしろ将来を見据えて有望株を捕獲にかかっているというか・・・」 「ほかく・・・」  オウム返しに呟く柚木に立石が同情の視線を送る。  こういう時にストッパーになる片桐がいないので、もはや野放し状態だ。  周囲も二軒目三軒目と言った雰囲気でほろ酔い加減の漂う店内だが、見た目は整っている池山達が繰り出す衝撃的な発言の数々に、一部の人たちが聞き耳を立てている。 「こいつら、どうしてくれよう・・・」  しかし、そもそも今夜は片桐がいてもいなくても最初から暴走特急だったことを立石は知らない。 「あ、私の短大はいたよ。中庭の噴水で堂々と額くっつけて十分以上も見つめ合ってる子達が。私は授業中だったから、講義そっちのけでまじまじと窓の外の二人を見ちゃったよ。あれ、本当にカップルだったみたいで、卒業後は一緒に暮してるって、風の便りに聞いた~」  相変わらずあっけらかんと本間は手を上げた。 「ま。いるところにはいると。そんなとこか?」  立石は話題を切り上げにかかる。 「いるところにはいるねえ・・・」  せっかくの立石の努力を池山がひっくり返した。 「そういや俺、余興で片桐の唇奪ったけど、あんときはそんなに良い反応なかったけどな」  あったらどうだというのだ。  心の中でがっくりと立石は崩れ落ちた。 「舌まで突っ込んだけど、フツー?つうか、物凄く嫌がられた記憶あるんだけど」
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