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本間と立石が両サイドから池山を見つめた。
すると、きょとんと、池山は首をかしげる。
「あれ?ユズは知らなかったんだっけ?」
「はい?」
「立石んとこのクマと俺、付き合ってるよ」
途端に、またもや村木が咳き込み出した。
「く、くまって・・・っ、つきあってるって・・・っ」
たいてい『クマ』と呼ばれるのは男性が多い。
しかし、もしかしたら、『クマ』のようにパワフルな女性かもしれない。
慌てて、橋口と柚木が彼女の背中を撫でる。
「ごめんごめん、美和ちゃん、刺激の強い話してごめんね~」
橋口は平謝りだ。
「・・・謝る相手って、そっち?」
本間が眉をひそめて池山の背中ごしに立石に問うと、彼は苦笑するのみだった。
「もう結構長いから、いい加減ばれてると思ってたよ。ユズはここのところ俺らと出かけることよくあったし」
開き直る池山に対して、柚木がぼそぼそと反論する。
「いや、普通はあなた方が付き合ってるとまでは思いませんよ・・・。なんかすごく仲が良いなとは思ってましたけど」
「そりゃそうだ。俺たちだって最初はまさかだろって思ったし。池山みたいにオープンなのが珍しいんだよ」
立石のフォローに、本間がぐっと握り拳に親指を立てた。
「まさか、この業界、多いんですか?」
立ち直った村木が不安げに尋ねる。
「なに?やっぱそういうのって気持ち悪い?」
逆に、池山も不安顔で問い返す。
「いいえ・・・。それは別にないですけど、他人様のことだし・・・。ただ、既婚者プラス同性カップルが多いなら、この業界で彼氏を見つけるのは難しいことなのかなと」
「ああ、それはない。・・・ないと思う。俺、片桐達のほか、知らないよ?」
両脇を振り向くと、本間と立石も首を横に振った。
「それは・・・ちょっと安心しました。私も、そろそろまともな恋愛したいので」
「そうよねえ。一日のほとんどを仕事につぎ込むんだから、やっぱり出会いは必然的に職場になるわよね」
橋口がほう、とため息をつく。
「そういや、キミタチみんな女子校出身じゃん。女の子同士でくっついている子いなかったの?」
興味津々で池山がにじり寄る。
それを受けて女子三人は顔を見合わせ、しばらく思案した。
最初に答えたのは、律儀な村木だ。
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