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「そこで、何を求めてるんですか、池山さん・・・。反応が良かったら、あなたたち韓国ドラマ並みに三角関係だか四角関係になって、今頃泥沼係争中ですよ・・・」
橋口が冷静に突っ込む。
「あ~。それは嫌なんだけど、俺のキスにぜんぜんなびかなかったのが、ちょっと悔しい気がしてさ」
「・・・池山さんって、実は愛されたがりと言うか、甘えたさんだよねえ」
にやにやと本間は笑う。
「ね。江口さんをそろそろ帰してあげたら?」
身体をひねって池山ごしに立石を見上げた。
「・・・その権限は俺にない。勘弁してくれ」
この爆弾男を野放しにしているとろくな事にならないのは骨身にしみているが、だからと言って折角キャリアアップ中の江口を北京から呼び戻す理由にならない。
「ああ、なんか俺、今、すっごくチューしたい」
後輩への気遣いを池山の脳天気な台詞が粉々にする。
「長谷川・・・。なんでこんな男と・・・」
思わず立石は、割り箸を握りしめて折ってしまった。
「・・あの。長谷川さんも男性ですか?」
こっそりと村木が本間に解説を請う。
「ううん。池山さんのモトカノ」
シンプルな回答に素早く脳を回転させ、おそるおそる更に問うた。
「・・・なんか、すでに三角だか四角だかですよね?」
「うわ、美和ちゃん鋭い~!」
そんな野次馬たちをよそに、立石は背中を丸めてぶつぶつと意味不明の独り言を呟いている。
「・・・立石さんって、ああみえて・・・」
「うん?」
「ただのヒトなんですね・・・」
「まあ、そこがいいんだけどね・・・」
外野のうるさい中、池山が立石にチューを仕掛けて顎を掴まれていた。
「池山さんの唇へのチューは確かに危険よね。官能的過ぎて、身体に直結しちゃう感じ」
にいっと唇を上げる橋口が、それこそ官能的な笑みを浮かべる。
「キスの先へ進みたくさせるのが池山さんのチューかな」
立石に引きはがされなかったら危なかったと、明るく笑い飛ばされて、柚木と本間がこそこそと正直な感想を述べた。
「・・・俺、鼻を食われる程度で良かった・・・」
「私も、ほっぺたで良かったかも・・・」
「・・・さすが、キス魔被害者の会」
新入りの村木はひたすら感じ入る。
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