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目を覚ます
「あなた、どうしたの、大丈夫」
体を揺さぶられて目を開けると、心配そうな顔をした妻の姿が見えた。
――夢?
どうやら今のは夢だったようだ。
「大丈夫?」
「ああ、ちょっと怖い夢を見ただけだよ」
そしてどんな内容の夢だったのかを妻に話す。
夢だったことで安心したのか妻はまた横になって眠ってしまった。
時々、こんなちょっと怖い夢をみることがある。自分がガーゴイルのような魔物に殺されてしまう夢も見たことがある。そのときはどうなったのかといえば、死んだ瞬間に別の人間の視点に切り替わったのだ。そしてその別の人間の視点でガーゴイルに食われている元自分の姿を見ている。
そのときには夢というのは自分が死んでも辻褄が合うようになっているんだなと感心したものだった。自分が死んでしまう夢さえ見ても大丈夫なんだと思うとなんだか安心することができた。
しかし、今回はどうなんだろう。
妻が僕のうなされ声に目が覚めなかったとしたら、あるいは結婚などしていなくって一人暮らしだったときにこんな夢を見たとしたら……
延々と出すことのできない声を出そうとあがき続けていたのだろうか。
僕は目を覚ますことができたのだろうか。いつも目を覚ましているのは自分の意志なのだろうか。
それともあれは夢ではなくって本当のこと?
夢の中でおじさんが教えてくれた言葉を思い出そうとしたのだが、どうしても思い出すことができなかった。
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