6人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
それからというもの、私と母は、毎年お盆におばあちゃんの地元を訪ねては、二人が眠るお墓に手を合わせている。
しばらくは、自分の身に起こった不思議な出来事を怖くも思ったけれど、今ではおじいちゃんから貰ったハンカチで涙を拭うたびに、強くなっていくような気がして嬉しくもある。
「じゃあ、また来るね」
散々胸の中で仕事の愚痴を連ねた私を、おじいちゃんが、おばあちゃんの隣で笑い飛ばしていてくれたら何よりも嬉しいと思う。
帰りの電車の揺れが眠気を誘う。
微睡みに落ちる手前で、私は気付いてしまった。
あの時、私は確かに500号室からのコールを取った。
病室も確かに500と書いてあった。
あの日は気が動転して気付けなかったけれど、うちの病院の部屋は全て末尾は『1』から始まる。
つまり『0』がつく部屋は無いのだ。
ーー私はあの時、一体どこにいたんだろう……。
一瞬背筋が粟だったけれど、すぐに考えるのをやめた。
だって、看護師は度胸がないとやっていけないのだから。
終
最初のコメントを投稿しよう!