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霊安室、それから……
朝になって、日勤帯の看護師への申し送りを済ませた私は、すぐに地下の霊安室へ足を進めた。
E口さんが何かを伝えようとしていたように思えてならなかったのだ。
「E口さん……」
本当にE口さんは、霊安室にいた。
真っ白な死装束に身を包まれて、まるで眠っているみたいだ。
「……ご遺族と連絡が取れなくて困っているんです」
私の横に立って、室長さんが言った。
痩せこけた頬が、彼が困っている印象を濃くする。
「お一人暮らしのようでしたから……E口さんは……。あの、こちらを着せてあげたいのですが、よろしいですか? ご生前にその時はこれを着せてほしいと仰っていらしたので……」
「えぇ。もちろん構いませんよ。私も手伝いしましょう」
「ありがとうございます」
二人でE口さんにスーツを着せていく。
最後のボタンを閉め終わった時に、右ポケットから何かが落ちた。
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