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そのうちに、ふと気がつく。
「…そういえば」
九条の抱えていた男の子は恥ずかしそうにしていたが、嫌がっていただろうか?
暴れてはいなかったようだ。
そして、九条は…。
「……あ」
確かあの時、一瞬だけ男の子を見下ろしたのだ。
その表情はどうだっただろうか?
九条の柔らかい口元に気がついたのは自分だけ?
絶対に見ることの無いであろう、九条の慈愛にも似た表情。
決してニッコリ笑った訳ではない。
けれど、見間違いでは決してない。
毎日、九条の事を見つめてきた自分だから分かる。
「………、誰なんだろう」
九条にあんな顔をさせた少年は、一体…。
大切な関係に違いない。
それならば…と、華林は黙って目を閉じた。
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