第三章

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第三章

 出逢って一週間目。僕たちはアドレスの交換をした。僕としては もっと早くしたかったのだが、タイミングがわからなくって。。 しかし 驚くなかれ! 彼女の方から、スマホを出して 「アドレス 交換しない?」 と言ってきたのだ。 ときおり、「超能力者か」と思うほど、僕の心の声に反応するようなことを言ってくれる... ...素敵な女性だ。  今日は6月21日。夏至の始まりの日だ。  彼女から「元祖四葉の花」について聞いて以来、ふたりで その存在を確認するのが日課になっていた。  今日も アドレスの交換を無事終了してから、周囲を見回し 「さりげなく」ふたりで「元祖四葉(候補)」の存在を確認し、顔を見合わせてうなずきあった。 「元祖四葉(候補)」はその数を増やし、今では見えてるだけで10本くらいの「四葉」が群生している。その存在を隠しておきたい僕たちには、危険なくらい「繁栄」している。  詩織(こんなに親しくなったんだ、名前で呼んだっていいだろう?)によると、この群生は全て同じ遺伝子を持つ 言わば「一族」みたいなもので、その中心に花が咲くらしい。言われてみると、確かに群生の中心付近に 未だ か細く頼りなげだが、小さなつぼみらしきものをつけた茎が見える。  周囲の三つ葉のクローバーは徐々に花を咲かせ始めている。  四葉の数が増えて群生の範囲が広がり、そのあたりだけすっぽりと抜けているようにさえ見える。  僕らが気にしているせいだとは思っていても、やけに目立つように感じ、不安になる。  とにかく今は、花が咲くまで誰にも見つからず、摘まれず...と、祈るだけだ。
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