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一日目 白い白い部屋の中。 あたしは窓辺からひまわりの咲く庭をみた。 あれほど世界が美しく見えるなんて思いもしなかった。初めて彩りを感じた。 二日目 白い白い部屋の中。 さまざまな色の絵の具を広げた。 キャンパスをあの向日葵でうめつくそうと思った。この白い独房のような部屋を色鮮やかにできたらもっと素敵なのに。 三日目 白い白い部屋の中。 キャンパスは緑や青、そしてなにより黄色が鮮やか。本物とはまだ遠いけれど、あたしの「好き」がまた増えた。 四日目 白い冷たい部屋の中。 筆が思ったように進まない。いらいらする。 体調も優れない。どこからかジジジと音がする。より一層いらいらしたので今日はもう絵は描かない。 五日目 白い部屋にも飽きて来た。 もっと遠くへいけたら。でもまだ絵が完成しない。だからあたしはまだ動けない。 六日目 しろいしろいへやのなか。 もう筆をもつのはやめろといわれた。頭の中から音がやまない。自分はもう長くないのだとおもう。絵は完成まぎわなのに。ああ頭の外からも音がする。うるさい、うるさいうるさい。 七日目 白い病室。 青年の遺体、虫の死骸、そして向日葵の絵でその部屋は彩られた。
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