人造米

8/8
前へ
/8ページ
次へ
  「ああ、また背中がムズムズする」  くるりと背中を向ければ、力士のように大きな真っ赤な手形がありました。  「な、なんだこれ!」  よく見ると、米印の痣の集合体なんです。  「え!」  「うわあああ!」  あまりの気味の悪さに友人たちは逃げ出してしまいました。  で、その中の一人が、他のゼミの学生たちに、このことを愚痴ったら、「薄情~」とか、「ほったらかして帰るとか、ありえんだろうが」とか、批判されて、渋々、もう一度、たずねたら、きっと吐き気がしたんでしょう、洋式トイレの便器に頭を突っ込んで、気を失っていたそうです。  「ヤバイ! 救急車!」  入院したそうなんですが、そのあと、宮川さんのおなかは腹水で膨張して、まるで妊婦みたいになってしまったといいます。  見舞いに行った友達の話だと、宮川さんはしきりに「ごめんなさい!」と、うわごとを言っていたそうです。  おなかの腫れは管で体液を排出すれば治まりますが、『アブミン』などの体力の維持に大切な蛋白質も一緒に流れて、どんどん身体はやせ衰えていきます。  宮川さんが元気に復学することはありませんでした。  問題の元カノは噂を嫌ったのか、とうとう大学に戻らなかったといいます。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加