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「ああ、また背中がムズムズする」
くるりと背中を向ければ、力士のように大きな真っ赤な手形がありました。
「な、なんだこれ!」
よく見ると、米印の痣の集合体なんです。
「え!」
「うわあああ!」
あまりの気味の悪さに友人たちは逃げ出してしまいました。
で、その中の一人が、他のゼミの学生たちに、このことを愚痴ったら、「薄情~」とか、「ほったらかして帰るとか、ありえんだろうが」とか、批判されて、渋々、もう一度、たずねたら、きっと吐き気がしたんでしょう、洋式トイレの便器に頭を突っ込んで、気を失っていたそうです。
「ヤバイ! 救急車!」
入院したそうなんですが、そのあと、宮川さんのおなかは腹水で膨張して、まるで妊婦みたいになってしまったといいます。
見舞いに行った友達の話だと、宮川さんはしきりに「ごめんなさい!」と、うわごとを言っていたそうです。
おなかの腫れは管で体液を排出すれば治まりますが、『アブミン』などの体力の維持に大切な蛋白質も一緒に流れて、どんどん身体はやせ衰えていきます。
宮川さんが元気に復学することはありませんでした。
問題の元カノは噂を嫌ったのか、とうとう大学に戻らなかったといいます。
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