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その瞬間、ナイフが振り下ろされた。
――私の、真横の壁に、激しい音を立てて。
「……オレは、別に寂しくなんかなかった、はずなのに……どうしてやろ、他人から言われて初めて気づいた気がした。オレは、寂しかったんや……」
彼は、泣いていた。
眼球の取れかけたその目から、流れるはずのない涙がポツリポツリと流れていたのだ。
「…………っ、」
彼はその涙を止めようと目に手を伸ばした。
私はそれを制し、「ダメ」と言った。
「もしその目に触ったら、多分目が取れちゃう。せっかく綺麗な目なんだから、大切にしなきゃ」
例えそれがコンプレックスだとしても、ね。
「……っ、うわあぁぁあぁあぁぁぁ…………っ、」
真夜中の雨空に、殺人鬼の鳴き声が響き渡った。
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