第5章 花束を君に

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第5章 花束を君に

「レイアス……ごめんなさい、私……」 と、事情を説明し謝るイリス。 目の端に涙を溜めた彼女に、レイアスが微笑む。 「イリス、俺の為にありがとう。でも1人で雪原に行くのは危険だから、次は一緒に探しに行こう!10年に一度しか咲かない花なんて、俺もちゃんと見て見たいしな!」 ありがとう、とイリスが微笑むと、ロイがわざとらしくレイアスを促す。 「レイアス、お前もイリスに渡したいものがあるんじゃなかったのか?」 そうだった!と、慌ててポケットから何かを取り出すレイアス。 「……イリス、誕生日、おめでとう……」 レイアスがポケットから取り出したのは、四葉のクローバーの形をしたブローチだった。 「四葉のクローバーは、幸せが訪れるって言い伝えがあるんだ。本当は花が良かったんだろうけど、イリスが好きな花が、分からなくてさ…。ギリアムさんに作ってもらったんだ、コレ」 しかし当然、イリスには記憶がないので誕生日など分からない。 「レイアス……私、記憶がないから、誕生日なんて……」 分からないよ、と続く予定の言葉はレイアスに遮られた。 「今日は、イリスの誕生日じゃないかもしれないけど、特別な日なんだ。」 え?と首を傾げるイリスはレイアスから、四葉のクローバーのブローチを受け取る。 「イリス。覚えてるかい?今日は、イスリーダ平原で、俺達が出会った日なんだ。だから、特別な日なんだよ」 「イリスに出会えて良かった、俺、すっごい幸せだよ!毎日が冒険なんだ!だからイリス。これからもよろしくな!」 ニカッと笑うレイアスを、イリスは嬉しそうに見つめる。 「うん。レイアス、これからもよろしくね」 今日は私達が出会った日。 お互いの運命が動き出した日。 レイアスにも、幸せが訪れますように、とイリスはブローチをそっと握りしめて祈る。
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