何が起こるにも唐突である

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 突然に、掃除をしようと思い立った。 「散らかりすぎなんだ、君の家は」  昨日訪問したフローにもそういわれた。彼は特に掃除に詳しいわけではないし、潔癖であるといわれたことは無いが、流石に家の半分を埋め尽くす混沌には辟易した。  彼の言うことももっともだった。オルランドはこの家を建ててから、一度も膨れ上がる混沌とその周囲を掃除したことがない。今日は丁度暇なので、掃除をしようと思い至ったわけだった。  オルランドは掃除が苦手だ。ものを捨てることをしたがらない。食べた鳥の骨まで溜め込む。溜め込んだ鳥の骨は外の穴の中に埋めてある。いわゆる集合墓地だ。捨ててあるだろうと言われても、捨てていないと主張している。集合墓地だと彼は主張している。  ひとまず埃を掃おうと外に物を運び出す。誰がいるわけでもないから盗む奴もいるまいと、遠慮なく何が入っているかわからない瓶やら箱やら本やらを運び出していると、たまに妙なものに出会う。大きな埃、それよりに大きな埃、さらにそれより大きな埃。埃を掃いつつ外に出ると、日の光に照らされそれが何なのかわかる。埃まみれになりながら、時折咳に犯されながら、彼は作業を進めた。  真面目に作業をしているので、それなりの荷物が外に運び出された。部屋が空っぽになると、まず彼は窓を開けた。開かずの窓になっていたところだ。建設以来一度も開けられたことのなかった窓は数十年ぶりに開き、山上のさわやかな風を取り入れた。  一息ついたところで、埃を外に吐き出した。使うのは愛用のほうきだ。飛行以外の目的で使うのは久々になる。ざっと綺麗になったと思ったところで乾拭きをし、日が暮れる前になんとかものを仕舞いなおさなければと窓を閉じた。ようやく選別にとりかかる。  たいていのものは捨てずにとっておくくせのあるオルランドの溜め込んだ数十年分の思い出の数々は、たいていのものは振り返ってみればごみだった。それでも一つ一つ埃を払い丁寧に並べていくあたり、ものにはなんやかんやで愛着があるらしい。ものが雑多に置かれていた棚には瓶や箱が丁寧に整然と置かれ、本はいつでも読めるように枕元に並べられた。どれも置いた覚えのないものばかりだ。新鮮に読めるだろう。  地味な作業をしているといつの間にか日が暮れていた。最後の荷物を運び入れる頃には、夕焼けが山に沈んでいき、街の方からは夜がやってきていた。
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