四角い箱

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私は今四角の中にいて、一人で横になっている。 聞こえるのは洗濯機の音だけで、 寒い四角の中は私の周りだけ暖かい。 彼の帰りを待っている間 何をして良いのかわからなくて。 寧ろ何もしたくなくて、 私には本当にあの人だけなのだと自覚した。 何もかもから、逃げたくて 誰にも会わなくてすむ遠くに来た。 誰も私を知らなくて、 関わることもなかったけれど。 また新しくここで繋がりができた。 また後悔も増えた。 また逃げ出したかった。 誰も私を知らなくて、新しい所。 でも出来なくなった。 私を離さない彼がいる。 私が離したくない彼がいる。 理解されなかった。ずっと、 どんなにもがいても 円満に終わることなんてなかった。 それは学校で、友達で、仕事で。 最初は良かった。でも 沢山出来た友達もすぐに壊れていった。 離れていった。 残ったのは少しだけ。 私は欠陥品なのだ。 とこの20年で理解した。 他人の目が見られなくなった。 存在しないはずの心が鉛のように重くなった。 上手く笑えなくなった。 どんどん嘘が上手になった。 一人でも平気だと笑うようになった。 下手くそに。下手くそに。 それは訴える事も出来ずにまた嘘を重ねた。 沢山沢山嘘をついた。 でも、彼が出来た。 彼がいる。 寂しさは増えた。 我儘も増えた。 でも、笑えるようになった。 一人だけを見られるようになった。 新しい仕事に就いて 頑張る彼を一人ひたすら待ちながら 私は今日も眠りにつく。 永い永い時間の中 こんな事を思い出しながら。 四角い箱は今日も私を閉じ込めた。
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